2026/10/01
- 加工ノート
- コラム記事
2026/10/01
「金久保の加工ノート」は、部品を設計・発注される方と、同じ切削加工の仕事をしている方に向けたシリーズです。加工の現場で実際に考えていることを、できるだけそのまま書いていきます。
第1回は、図面を受け取ったときに最初に何を見ているか、という話です。
目次
同じ図面を渡しても、会社や担当者によって作り方は変わります。どの機械を使うか。何回掴み替えるか。どの順番で削るか。見積もりの金額も納期も、実はこの段階でほとんど決まっています。
私は以前、最大手の工作機械メーカーでアプリケーションエンジニアとして、お客様の図面から工程と加工条件を組み立てる仕事をしていました。いまは金久保製作所で、同じことを毎日やっています。そのなかで、図面を開いたときに見る順番はだいたい決まってきました。
削る場所より先に、掴む場所を見ます。部品は機械の上でしっかり固定できなければ、どんなに良い機械でも精度が出ません。
工程が進むほど、掴める場所は減っていきます。実際に、社内の申し送りに「2工程目はクランプが弱いので注意」と書かれている部品があります。こうした部品は、工具の突き出しを短くする、1回に削る量を減らすなど、削るときの力をできるだけ小さくする方向で工程を組みます。
部品を外して向きを変え、掴み直すたびに、わずかに位置がずれる可能性があります。面と面、穴と穴の位置関係に厳しい公差がついている場合は、それらを同じ段取りのなかで削れるように工程を考えます。
そのために使うのが、横形マシニングセンタのテーブル割出しや、立形マシニングセンタに載せた割出し治具、5軸加工機、複合加工機です。一度掴んだまま90°ずつ向きを変えて4面を削れれば、掴み替えによるずれはなくなり、段取りの時間も減らせます。
図面の公差や表面粗さの指示は、加工側にとって「この部品のどこが機能上大事か」を読み取る手がかりです。ほとんどが普通公差で、1か所だけ厳しい公差がついていれば、「ここが相手部品とはまる所だな」と分かります。工程の順番も測定のやり方も、その寸法を中心に組み立てます。
逆に、すべての寸法に同じように厳しい公差がついていると、どこを優先すべきか判断がつきません。結果として全部を慎重に削ることになり、時間もコストもかかります。
穴加工で気にするのは、径そのものよりも、径に対してどれだけ深いかです。細くて深い穴は切りくずが詰まりやすく、ドリルが折れやすくなります。
たとえば、アルミ部品にΦ1.2mmの深い穴をあけたときは、工具メーカーの推奨条件をそのまま使わず、自社の機械に合わせて回転数と送りを調整しました。ドリルが抜ける直前だけ送りを落とし、穴あけも2段階に分けて、量産で安定して流せる形にしています。
最後に、材料・形状・数量から、どの機械で作るかを決めます。
同じ部品でも、1個と1,000個では答えが変わります。試作なら段取りの短さを優先し、量産なら1個あたりの加工時間と、夜間も含めて機械を止めずに回せるかを優先します。量産に合わせて、横形で作っていた部品を立形の2個取りに移すこともあります。金久保製作所には新旧さまざまな機械があるので、部品ごとに一番合う機械を選べるのが強みです。
図面の段階で次のようなことを共有いただけると、コストや納期で工夫できる余地が広がります。
「この形状は加工できるか」「どうすれば安くなるか」といった段階からのご相談も歓迎しています。
次回は、横形マシニングセンタで作っていた部品を、立形マシニングセンタへ移したときの話です。機械が変わると、プログラムや段取りの何が変わるのかを書く予定です。
株式会社金久保製作所 代表取締役
図面を見て最適な工程を提案し、お見積もりから納品まで代表が直接対応。大手空圧機器メーカーをはじめ、多くの製造現場を長年支えてきました。