はじめての切削加工 第1回
そもそも「切削加工」って何?
普段の生活では、あまり耳にすることのない「切削加工(せっさくかこう)」という言葉。
しかし、自動車、電車、飛行機、医療機器、産業用ロボット、工場の生産設備など、
私たちの身の回りには切削加工によって作られた部品が数多く使われています。
今回は、金属加工を知らない方にも分かるように、
「切削加工とは何か?」というところからご紹介します。
目次
切削加工とは「材料を削って形を作る」加工
切削加工とは、簡単に言えば、
金属などの材料から不要な部分を刃物で削り取り、
必要な形を作っていく加工方法です。
イメージとしては、彫刻に少し似ています。
例えば、直径50mmのアルミの丸棒があったとします。
最初はただの金属の棒ですが、機械に取り付けて刃物を当て、
- 外側を削る
- 穴を開ける
- 溝を入れる
- ねじを作る
- 平らな面を作る
といった加工を繰り返していくことで、一つの機械部品になっていきます。
加工するときには、削られた金属が「切りくず」となって排出されます。
切削加工とは、大きな材料から必要な部分だけを残していくものづくりです。


何を使って削るの?
金属を削るためには、「切削工具」と呼ばれる専用の刃物を使います。

身近なものではドリルがあります。
ドリルを回転させて材料に押し込めば、穴を開けることができます。
しかし、切削加工で使う工具はドリルだけではありません。
- エンドミル:平面や溝などを削る工具
- バイト:旋盤で外径や内径などを削る工具
- ドリル:穴を開ける工具
- タップ:ねじ穴を作る工具
加工する形状に合わせて、さまざまな工具を使い分けます。
一つの部品を作るために、何種類もの工具を使用することも珍しくありません。
「材料が回る」加工と「工具が回る」加工
切削加工にはさまざまな方法がありますが、代表的なのが
旋盤加工とマシニング加工です。
初めて切削加工を見る方には少し分かりにくいのですが、
大まかには次のように考えると分かりやすくなります。
旋盤加工:
材料を回して削る
マシニング加工:
工具を回して削る
旋盤加工

旋盤では、加工する材料そのものを高速で回転させ、
そこへ刃物を当てて削ります。
そのため、
- 円筒
- シャフト
- 軸
- 円形の部品
など、丸い形状の加工を得意としています。
現在では、コンピューターによって機械を制御する
「NC旋盤」が広く使われています。
マシニング加工

一方、マシニングセンタでは、基本的には材料を固定し、
回転する工具を材料へ当てて削ります。
こちらは、
- 平面
- 穴
- 溝
- ポケット形状
- 複雑な立体形状
などを加工するのが得意です。
実際の部品加工では、「旋盤だけ」「マシニングだけ」と
単純に分けられない製品もたくさんあります。
製品の形状や精度、数量などを考えながら、
最適な加工方法を選択していきます。
金属なら簡単に削れるわけではない
「機械で削るだけなら、それほど難しくないのでは?」
と思われるかもしれません。
ところが、実際の切削加工はそう単純ではありません。
例えば、同じ形の部品でも、
- アルミ
- 鉄
- ステンレス
- 真鍮
では、それぞれ削ったときの性質が違います。
さらに、
- 工具を何回転で回すのか
- どのくらいの速さで動かすのか
- 一度にどのくらい削るのか
によっても、加工結果は大きく変わります。
速く削りすぎれば工具が壊れることがあります。
だからといって、ゆっくり加工すれば良いというわけでもありません。
工具の寿命、加工時間、寸法精度、仕上がりなどを考えながら、
適切な条件を設定する必要があります。
この条件を「切削条件」と呼びます。
0.01mmの世界で部品を作る
機械部品では、ただ「だいたい同じ形」に作れば良いわけではありません。
例えば図面に、
φ20 ±0.01mm
と書かれていれば、直径20mmに対して、
許される誤差はわずか0.01mmです。
0.01mmは1mmの100分の1。
人間の目で見ただけでは、ほとんど分からない大きさです。
しかし、機械の中では、そのわずかな違いによって、
- 部品が入らない
- ガタつく
- 正しく動かない
といった問題が起こります。
そのため切削加工では、
削る技術だけではなく、正確に測る技術も非常に重要です。
「1個作れる」と「1,000個作れる」は違う
切削加工でもう一つ重要なのが、加工する数量です。
一つの製品を一度だけ加工するのであれば、
狙った寸法に合わせながら慎重に加工することができます。
しかし、同じ部品を数百個、数千個と作る場合は話が変わります。
加工を続ければ工具は少しずつ摩耗します。
機械の温度も変化します。
材料にも多少のばらつきがあります。
最初の1個を正しく作ることと、
1,000個目まで同じ品質で作り続けることは別の技術です。

量産の切削加工では、
- 工具寿命
- 加工時間
- 寸法変化
- 測定
- 治具
- 段取り
- 自動化
など、さまざまなことを考えながら加工方法を作り込んでいきます。
ここが、切削加工のおもしろさでもあり、難しさでもあります。
切削加工は「機械に削らせる仕事」なのか?
最近の工作機械は非常に高性能です。
プログラムを作り、材料と工具をセットすれば、
機械は自動で加工してくれます。
それなら、
「人間は機械に材料を入れるだけなのでは?」
と思うかもしれません。
実際には、その前に人が考えなければならないことがたくさんあります。
- どの機械を使うのか
- どこを最初に削るのか
- どこを基準にするのか
- どうやって材料を固定するのか
- どの工具を使うのか
- どんな順番で加工するのか
- 何回転で、どのくらいの速さで削るのか
- 寸法が変化したら、どこを調整するのか
工作機械がどれだけ進化しても、
「どうやって作るか」を考えることが、
切削加工の重要な仕事です。
金久保製作所の切削加工
金久保製作所では、NC旋盤、マシニングセンタ、
5軸加工機、複合加工機など、さまざまな工作機械を使って
金属部品を加工しています。
私たちが考えているのは、
単に図面通りの形を削ることだけではありません。
- どのような工程なら安定して品質を保てるのか
- どうすれば加工時間を短縮できるのか
- どうすれば人の作業を減らせるのか
- どうすれば数百個、数千個でも安定して作り続けられるのか
こうしたことを考えながら、一つひとつの加工工程を作っています。
一見すると同じように見える金属部品でも、
その裏側にはたくさんの加工技術や工夫があります。
まとめ|切削加工とは?
切削加工とは、
材料から不要な部分を削り取り、
必要な形と寸法を作り出す加工方法です。
しかし、その一言の中には、
工具、材料、工作機械、精度、測定、切削条件、量産技術など、
非常に多くの技術が詰まっています。
この「はじめての切削加工」シリーズでは、
普段なかなか見ることのできない金属加工の世界を、
金久保製作所ができるだけ分かりやすくご紹介していきます。