2026/09/08
- 金久保製作所ブログ
- コラム記事
金久保製作所には、勤続66年の社員がいます。
もう一人、勤続65年の社員もいます。
二人とも中学を出てすぐ、15歳のときにこの会社に入りました。今は81歳と80歳です。創業者だった私の祖父の、右腕と左腕にあたる人たちです。
社内では、名前ではなく「工場長」「部長」と呼ばれています。
二人は今も現役で、汎用フライスも、汎用旋盤も、マシニングセンタも使います。昔の機械しか触れないわけではありません。
そのすぐ近くでは、20代の社員も働いています。新卒で入った二人で、どちらも文系の出身です。機械のことは何も知らないところから始めました。
年齢だけを見れば、祖父と孫どころではありません。60歳近く離れています。
でも工場の中では、それほど大きな壁はありません。
目次
この二人の呼び名は、役職名として決めたものではありません。
創業者である祖父が、そう呼び始めたものです。
会社がまだ小さかった頃から、祖父はこの二人を頼りにしていました。
そのまま今日まで、社内では誰もが「工場長」「部長」と呼んでいます。
私も、子どもの頃からそう呼んでいます。
会社にとっては、まさに屋台骨と言える二人です。
製造業で「技術継承」というと、ベテランの技術を若手に教える、という一方向のイメージがあるかもしれません。
もちろん、それも大切です。
長年機械を触ってきた人だから分かること。
図面には書いていない加工の勘所。
音を聞いて「何かおかしい」と気づく感覚。
バリの出方や、傷の見つけ方。
そういうものは、簡単にマニュアルにはできません。
先日も、若手が汎用機の使い方をベテランに聞いていました。
今の工場では、多くの部品がNC機械で加工されます。プログラムを作って、機械が動く。若い社員が最初に覚えるのは、そちらの世界です。
一方、汎用機はハンドルを手で回して削ります。数値ではなく、手の感覚で覚える機械です。
これを教えられる人は、社内でも限られています。
でも一方で、若い社員だからこそ得意なこともあります。
少し前のことです。
ベテランが、スマートフォンで加工の様子を撮影しようとしていました。
自分がやっている加工を、動画で残しておこうとしたのだと思います。
ただ、撮り方が分からない。
そこで、若手に聞いていました。
65年やってきた人が、入って数年の若手に教わっている。
その光景が、私はとても金久保製作所らしいと思いました。
長く続けてきた人が、今も新しいことを覚えようとしている。
そして若手のほうも、それを当たり前に教えている。
技術継承は、上から下への一方通行ではありません。
ベテランの経験と、若手の新しい知識を、お互いに持ち寄る。
それが今の金久保製作所です。
「会社の雰囲気はどうですか」と聞かれることがあります。
正直に言うと、金久保製作所はものすごく賑やかな会社ではありません。
製造業らしく、寡黙な人も多いです。
仕事中は、それぞれ自分の機械に向き合っています。
でも、雰囲気はいい。
誰かが困っていれば相談する。
加工で悩んでいれば一緒に考える。
年齢や社歴が違っても、必要なときには普通に話ができる。
私は、この距離感が金久保製作所らしいと思っています。
無理に仲良しを演じるわけではない。
でも、ちゃんと人と人とのつながりがある。
製造業なのに、どこか温かみがある。
そんな会社です。
私は小学4年生の頃から、工場の上で暮らしていました。
それまでも祖父の家に行けば、機械がたくさんあって、油の匂いがする。
子どもの私にとって、金久保製作所はそんな場所でした。
工場の上に住むようになってからは、従業員のみんなにもずいぶん可愛がってもらいました。
今、自分が社長という立場になって振り返ると、会社の人たちは単なる「従業員」という感覚ではなかったのかもしれません。
子どもの頃から知っている人がいて、その人たちと今も同じ会社で働いている。
もし祖父に、今の金久保製作所を見せることができたら。
最新の機械も見せたい。
ロボットも見せたい。
会社がここまで続いたことも伝えたい。
でも、それ以上に、
「みんな楽しそうに働いているよ」
と伝えたいです。
そして、
「工場長も部長も、まだ働いてるよ」
と言ったら、きっと驚くと思います。
金久保製作所には、昔ながらの汎用機もあります。
その一方で、最新鋭の工作機械や5軸加工機、自動化設備、ロボットもあります。
人も同じです。
65年この仕事を続けてきたベテラン。
入って2年の若手。
30代で、未経験からこの世界に入ってきた社員も、最近3人加わりました。
私は、どちらか一方だけになればいいとは思っていません。
古いから捨てる。若いから新しい。
そんな単純な話ではありません。
だから金久保製作所では、
**残すものは残す。
変えるものは変える。**
という考え方を大切にしています。
勤続66年の工場長と、入社2年の新人。
同じ機械を使っているわけではありません。
得意なことも違います。
仕事への入り方も、まったく違います。
でも、同じ工場で働いている。
そして、困ったときにはお互いに聞ける。
私は、その光景がこれからも続いてほしいと思っています。
このブログでは、金久保製作所の人、技術、歴史、そしてこれからについて、少しずつ紹介していきます。
次回は、
「そもそも金久保製作所って、どんな会社なのか」
1957年、16坪の工場と旋盤1台から始まった会社が、どのように今まで続いてきたのか。
会社の歴史と、今の金久保製作所について書いてみます。
株式会社金久保製作所 代表取締役
図面を見て最適な工程を提案し、お見積もりから納品まで代表が直接対応。大手空圧機器メーカーをはじめ、多くの製造現場を長年支えてきました。